白髪
白髪が嫌だからブリーチ?逆転の発想に潜むリスクとは
この「白髪を隠す」ということは、日本人の髪色であれば「黒くする」行為と言い換えられます。色素の抜けた髪に色素を入れるのですから、時間もある程度は必要ですし、維持するのも少し大変なのは仕方がないのかもしれません。
しかし、最近はとあるブームによってこの白髪を「より白くする」という逆転の発想に注目が集まっています。
グレイッシュヘアーが流行の兆し
白髪が目立つようになってくると、しょっちゅう髪染めをしないといけないような気分になります。「ついこの前やったばかりなのに…」と髪の生え際に光る白髪を見つけてため息をついている方も多いのではないでしょうか。
そんな中、ここ1〜2年のうちにかなりの数の美容誌やコラムで取り上げられるようになっている「グレイッシュヘア」が白髪に悩む方々の注目を集めています。
2017年夏くらいから流行が始まったようですが、2018年春の流行トレンドヘアとしてすでに2500件以上のヘアカタログが各美容室から公開されています。女性向けはもちろん、男性向けのグレイッシュカラーもスタイリッシュな白髪対策として人気を集めているようです。
白髪を魅力的に魅せる人が増え始めた
「ナチュラルに白髪を楽しもう」というコンセプトを基に、海外のセレブを始め日本の著名人の中にも白髪を隠さず、グレイッシュカラーにして公の場や写真に収め、その洗練されたスタイルに「これなら白髪を隠す必要がない!」と一般にもチャレンジしたい人が増えているのです。
また、ヘアスタイルも白髪部分をあえて強調するようなカットにしたり、グレイッシュカラー部分を際だたせるように複雑なインナーカラーを使うなどすることで、「老化現象で出てきた白髪」というよりも「オシャレの一環」といった見せ方が主流になっているケースも増えています。
このような流行の兆しによって、更に【白髪onグレイッシュカラー】の人口は増え続けています。
白髪を黒く染めるより全体を白くしたほうが楽?
アジア系の人々の場合、髪の色素は焦げ茶から黒といった暗いトーンの色になります。白髪とは正反対の色素であるため、金色の欧米系の人々よりも白髪がより目立つのです。
この前染めたばかりなのに…と髪の根元にキラキラと光る白髪にお悩みの方にとっては、非常に画期的で在る上に「逆転の発想」によって白髪の存在を認めやすくなる心理的効果もあるかもしれません。
今日からすぐグレイッシュヘアを楽しむために、あえて白髪にブリーチをかける方も増加中…しかし、実はその方法にはリスクが潜んでいることを忘れないようにして頂きたいのです。
白髪頭にブリーチをするという意味とリスク
白髪をおしゃれにするために、と即ブリーチを行う前に、一度「ブリーチ」という行為の本質をチェックしておきましょう。実はむやみに行うことで「より白髪を増やす」「脱毛しやすい状態を作る」といったリスクにつながってしまうのです。
ブリーチは「髪の色素を抜く行為」である
白髪染めを含める「ヘアカラー」と「ブリーチ」の違いをご存知でしょうか?
どちらも髪に対してはダメージを与えるという点では共通していますが、比較するのであればブリーチの方がより強力なダメージを与えることになります。
なにせ短時間でキューティクルを一度すべて開き、中の色素を破壊し髪の色を変化させるわけですから、髪内部のタンパク質も完全に変性しますし、頭皮細胞も無傷ではいられません。
通常のカラーやマニキュアと比較すれば、髪にとっては2〜3倍のダメージになるわけですね。
キューティクルや色素細胞を変質させる
ブリーチ剤にも色々な種類がありますが、基本的にはアルカリ剤と過酸化水素剤という薬品が使われており、この成分が髪に付着することで化学反応が起き、色素が抜けていきます。
- アルカリ剤でキューティクルを開く
- 髪は3層の鎧によって守られており、この一番外側の鎧がキューティクルと呼ばれているものです。キューティクルはうろこ状の鎧となっており、外部からの有害成分が内部に入り込まないようにしています。ブリーチ剤に含まれているアルカリ剤はこのキューティクルに作用し、うろこ状の鎧を毛羽立たせるように開きます。その隙間から薬品が中に入り込みやすいようにする、いわゆる「誘導体」です。
- 過酸化水素が色素を破壊する
- アルカリ剤によって開かれたキューティクルの隙間から、ブリーチ剤の過酸化水素が入り込みます。さらにこの過酸化水素はアルカリ剤によって酸化反応を起こし、この反応が色素を細かく砕きます。
- 破壊された色素は再生されない
- 一度細かく砕かれた色素は、時間経過があっても再度結合することは出来ません。そのため、ブリーチによって色素が破壊された髪は自然と抜け落ち新しい髪に生え変わるまでは明るい色のままになります。上からカラーなどを行った場合、髪内部の酸化が進みますので、色落ちしやすい状態の髪質に変化していきます。
ブリーチ剤によって髪を脱色したとしても、すぐに真っ白の状態になるわけではありません。
元々色素の少ない金髪系の髪質であればかなり白の状態に近くはなりますが、アジア系の人の色素はそれよりも数万倍多いとされており、まずは明るい茶色や黄色がかった茶色、といった色に変化します。
一度の薬剤でし、もしもそのような薬剤を使う場合はブリーチをした部分の髪や頭皮ダメージはかなり深刻なものになります。
美容室などでプロに念入りにケアをしてもらいながら行ったとしても、ある程度の脱毛や肌荒れ、髪ダメージは仕方がないと言えるかもしれません。
蓄積された髪ダメージは白髪を大量に作る原因
先述した通り、ブリーチ剤やグレイッシュヘアを作るためのダブルカラーという技術を使う場合は髪のダメージは避けて通れません。
ダメージが蓄積されると、新しい健康な髪を作り出すための毛母細胞が衰えていきます。
メラニン色素細胞はこの毛母細胞からエネルギーを分けてもらいながら色素を作りますので、毛母細胞が衰えることは白髪を増幅させることに直結します。
ブリーチによって破壊されたメラニン色素は修復されませんし、色素をたっぷり含んだ細胞も疲弊しているとなれば、まだ白髪になるはずのなかった健やかな髪も色素を作れないまま生えてきてしまいます。
結果的に「白髪を隠すための技術」が「白髪を増やしてしまう原因」になるのです。
頭皮ダメージが深ければ永久的な脱毛状態を起こすこともある
毛母細胞は色素だけでなく、髪そのものを作り出すための母艦でもあります。この毛母細胞が衰え続ければ、「髪を生み出すための底力」は失われ、若い人でも脱毛が起こる場合もあります。
ホルモンバランスの乱れ、加齢、その他の環境要因によって、人体の毛髪は徐々に細く痩せ始め、抜けやすい状態に変化していきます。そこに外部ダメージを加えることで髪痩せが促進され、頭皮にしがみついていられずスルリと抜け落ちてしまいます。
また、セルフで行うブリーチの場合、薬剤は非常に濃度が濃くなっている上、地肌につけてしまう人も多いために、頭皮ダメージも髪ダメージと同じく蓄積されやすいと考えられています。
市販品のブリーチ剤を使う場合、かなり慎重にダメージ対策を行う必要があるのです。
黒髪を白くすれば今度は「逆プリン」に悩む
案外盲点なのかも…と感じますが、髪を白く脱色すれば、そこから伸びてくる髪の多くは「黒」です。
つまり、通常は「黒い髪の20%の生え際が白くなる」のに対し、白髪頭にブリーチをした場合「白い髪の80%の根本が黒くなる」のです。
髪は一般的に、1日で0.3mm伸びると言われています。目視で気になる長さになってくるのがおおよそ1cmくらいだとすると、およそ1ヶ月足らずで黒い根本が浮いてくるような感じになります。
逆プリンは大して気にならない!という人であれば良いかもしれませんが、常にスタイリッシュに白髪をコントロールしたいという人にとっては、どちらも心理的負担は大差はないのかもしれません。
グレイッシュヘアを楽しむにはセルフブリーチは避ける
人気が高まるグレイッシュヘア。ちょっとヘアカタログを眺めるだけでも、筆者も「おしゃれ!かっこいい!」と本心から感じましたし、挑戦してみたいという気持ちに駆られました。
今回はリスクに注目してピックアップをしましたが、「白髪をおしゃれに楽しむ」方法としては優秀で斬新なテクニックであることは間違いありません。
白髪に悩む人がグレイッシュヘアを楽しむポイントは2つ。
- 市販剤を使ったセルフブリーチは避ける
- 伸びた髪もカバー出来るようなデザインにする
ご自身で行うにはやや難しいですが、市販剤よりも美容院で使っている薬剤の方が髪に優しく、かつ美容誌さんが的確にケアをしながら行ってくれますので、長期的に見れば長持ちするグレイッシュヘアを楽しめるのです。
白髪にブリーチが絶対にダメ、というわけではありませんが、そのダメージを減らす努力は怠らないというのが大切なポイントです。