脱毛症
抜毛症の原因は?7つの症状や特徴を今すぐチェック!
- お菓子を食べるのを止められない
- 煙草をやめられない
- 眠る前のスマホいじりをやめられない
人には千差万別なクセがあり、実際にそのクセによって本当に心が満たされているのであれば、それほど大きな問題にはなりません。また、大半の場合は「命に関わる」などと言われればやめるよう努力することが出来るケースなのではないでしょうか。
やめたいと切実に思っているのに自分で自分を止められず、ひどく自分自身を傷つけてしまう…一般的に、これは「心の病気」によって起こっているクセだと言われています。
そうした心の病気のひとつとして「抜毛症」という病気があります。
抜毛症(ばつもうしょう)とは何なのか?
耳馴染みがあまりない、という方も多いかもしれませんが、抜毛症は昔からある病気のひとつです。
少し前までは子供がよくかかる病気と考えられていましたが、最近では年齢を問わず様々な人が罹患しているという指摘もあります。
自分で自分の髪を抜いてしまう病気
抜毛症は読んで字のごとく、「毛を抜く」病気です。
主な対象は頭部にある髪の毛ですが、症状が悪化すると眉、まつげ、陰毛を含む体毛すべてが対象となります。片側のまつげだけが無い、頭部の髪が不規則かつバラバラの大きさで脱毛している、などの状態もありえます。
原因は不明瞭。大半は「精神的ストレス」
抜毛症の原因は未だにはっきりとはわかっていません。
症状が悪化していくと、ただ抜くだけではなく抜いた体毛を自分で食べる行為、「食毛症(ラプンツェル症候群)」を併発します。
大量の毛髪は胃腸器官に入っても消化されにくいものですので、色々な疾病を引き起こすリスクが高くなります。
- 腸閉塞
- 胃腸炎
- 胃潰瘍
- 慢性的な食欲不振や吐き気
また、異物を食べることに脳と体が慣れてしまうことで、体毛以外の異物(土や紙、木の枝など)を食べてしまう「異食症」を引き起こす可能性もあります。
円形脱毛症との違いは?
発音はよく似ているのですが、「脱毛症」と「抜毛症」は全く異なるものです。
- 脱毛症(円形脱毛症)
- 頭皮の環境不良、血行不良、ホルモンバランスの乱れや加齢などによって、自然と髪が部分的に抜け落ちる症状です。ストレスによっても引き起こされますが、遺伝や身体的病気の後遺症などによっても起こります。
- 抜毛症
- 頭皮環境やホルモンバランスにはなんら異常はない健康的な体毛を、自分の手を使って無理やり引き抜く、そしてその行為をやめられない疾病です。多くの場合、自分でやめたいと思っているのにやめられない、ある種の悪癖状態となり一人でコントロールすることができません。
また、脱毛症の多くは青年期から更年期、高齢層に多く起こるものであるのに対し、抜毛症は早くは未就学児童から始まります。
最初の内はなんとなく手の感触が楽しくてついてしまった癖が、だんだんとエスカレートしてしまう場合もあります。
強迫性障害(OCD)とはまた異なる病気
ほんの少し前まで、抜毛症は精神疾患のひとつである「強迫性障害」の症状のひとつとされてきました。
- 強迫性障害とは
- 強い不安感やこだわりによって、「こうしないではいられない」と思い込んでしまい、日常的、社会的に支障をきたすの精神疾患のひとつです。手を洗っても洗っても汚れているような気がする、自分が犯罪を犯していないか何度も警察に確認をする…などが特徴的症例です。
強迫性障害である患者さんに抜毛癖が多くあることから、「抜毛症=強迫性障害の症状のひとつ」とされてきたのです。
そのため精神疾患の国際診断基準が改訂され(DSM-5)、その中で抜毛症はBFRBs(Body Focused Repetitive Behavior)、強迫性障害(OCD)とは区別されるようになりました。
BFRBsは「身体的に負荷のある行動をくり返し行う行為」、爪噛みや過度な皮膚ひっかき、唇噛みと同項の症状と考えられています。
大人でも子供でもかかる可能性がある
先に少しだけ述べましたが、抜毛症は大人でも子供でもかかる可能性があります。
明確な原因はありませんが、「体毛を抜く感触、音、痛み、食感」などによって一時的にでも現実逃避を行うというのが癖になっているために、些細な事でもきっかけがあれば誰でも発症する可能性があるのです。
- 子どもの場合
- 小さな子供の場合、多くは最初のきっかけは「遊び」だと考えられています。たいくつ、興味などから小さな子供は色々な物に手を伸ばしたり口に入れたりしますが、その対象が毛髪であることも少なくありません。
ぷち、ぷち、という感触が楽しく、成長してもその感覚が忘れられずに続けてしまう子もいます。また、多くの場合環境変化や家族間のストレス、学校のストレスなどから逃避するためにそうした感触や痛みを求めてしまうこともあります。
- 大人の場合
- 子どもの頃からの癖が抜けずに、大人になっても続けてしまう人ももちろん一定数存在しますが、大人になってから突然抜毛症になる人もいます。大人の場合はやや女性の方が多いと言われていますが、男性も少なからず発症します。
ホルモンバランスの変化(ストレスを始め更年期障害や生殖器の疾病など)から抑うつ状態を起こしたりすると、身体的、精神的苦痛から逃れるために毛を抜いてしまう場合が多いようです。
抜毛症の7つの特徴と症状をチェックしよう
「これって抜毛症?脱毛症?」自分、あるいは家族に脱毛斑を見つけた時、まずはどちらであるのかを考え、適切な医療行為を行うのが解決への近道となります。
先述した通り、「脱毛症」と「抜毛症」には異なる点がいくつもあります。抜毛症の特徴をピックアップしましたので、どちらの症状であるのかの簡易チェックを行ってみて下さい。
1.周囲に隠れて体毛を大量に抜く
もしも脱毛斑を見つけた時、それが自分で無い場合(ご家族、お子様など)は「隠れて行っていないか」がチェックポイントのひとつです。
脱毛斑が出来てしまっても、人によっては「自分で抜いている」ということをけして認めず、黒いマジックで頭皮を塗る、ヘアスタイルやつけ毛で誤魔化す、という行動に移ります。
2.髪だけでなく眉や体毛も対象になる
抜毛症の対象は「体毛」すべてであることを忘れないようにしましょう。
頭部に異常は認められなかったとしても、まつげが不自然に抜けている、体毛の一部が不規則な脱毛斑になっているなどの症状があったら抜毛症を疑っても良いかもしれません。
3.利き手側の体毛ばかりが抜ける
人間は利き手の方が力が入りやすく、また若干ではありますが触覚(手や指先の感触)が鋭敏です。
そのため、円形脱毛症では左右の差はあまり生まれないのに対し、抜毛症の場合は利き手側の毛髪ばかりが大きく抜けている、ということがあります。
右手が利き手の人であれば頭部の右側、左手ならば頭部の左側が多く抜けるという具合です。
4.頭部や体毛が不規則に抜けている
脱毛症の場合、いくつかのパターンがありますので脱毛斑の大きさだけで見分けるのは少し困難かもしれませんが、円形に抜け落ちていくパターンがやや多くなります。
抜毛症の場合、利き手側の部位から徐々に脱毛版が地図様に広がる不規則な状態になりがちです。手が届きにくい方の毛髪は残っている、抜け方が一定ではない、急激に広がった、という場合は抜毛症も疑ってみて下さい。
5.髪が不均一にチリチリになっている
抜毛症の場合、自然に抜け落ちたわけではなく強い力を使って頭皮から毛根を引き抜いている状態です。
抜けた髪はもちろん新しく生えてきますが、ダメージがあると正常な細胞分裂が出来ずに「チリチリの髪」が生まれてしまいます。
髪が一部分だけチリチリで、長さも不均一、かつ正常な状態の髪と入り混じっているような生え方をしていたら抜毛症による脱毛斑の跡かもしれません。
6.爪噛みなど他の身体的くり返し症状がある
抜毛症と同類項の症状に「爪噛み癖」や「唇噛み」など、やってはいけないとわかっているのにやめられない身体的くり返し症状(BFRBs)があります。
これらの癖は併発している場合も多く、髪を抜けない状態を作ったら爪を噛み始めてしまった、という症例もあります。
BFRBsのほとんどの外部要因はストレス。このストレスが解消、あるいは解決していない状態である場合、次々と自らの体に負荷をかける癖を行ってしまうのです。
7.周囲からの指摘を認められない
抜毛症の患者の多く…物心がついた以降の年齢であれば、「自分で自分の髪を抜くのは良くない行為なのだ」ということは理解出来ています。
しかし、理解しているにも関わらずその癖を止められないため、心理的には次のような悪循環が生じています。
- 外部的、心理的ストレスによって髪を抜く
- その行為は良くない、と理解しているため自己を否定、責める
- 自己否定によるストレスにより髪を抜く
いかがでしょうか。抜け道のない自己否定のループにはまり込んでしまうために、精神状態は「常に追い詰められた状態」になっているのです。
そのため「自分で髪の毛を抜いているのではないか?」とどれほど優しく聞いたとしても、「そんなことはしていない」と否認しがちです。
肯定的に、献身的に治療を勧めたとしても「自分は異常な行動はしていないのに」と、周囲を敵視するといった症状を起こすこともあります。
自分でコントロールすることは難しい
実は、筆者は子供の頃から爪噛みの癖がありました。
幼児の頃で一旦はその癖がおさまりましたが、少し大きくなった頃に強くストレスを感じることがあり、なんと爪噛みが復活してしまったのです。そして、大人になって「これは一種の病気だ」と自覚するまでその癖が残ってしまいました。
その時はストレスの種はほぼ解決しており、癖だけが残っている状態でしたので、親戚のアドバイスに従い予防策を講じることでなんとか改善することができました。
ですが、爪を噛みたいという衝動を抑えられるようになるためにはおおよそ1年ほどかかったと思います。適切な治療法、予防法を知っていた親戚の助言がなければもっと時間がかかったでしょうし、もしかしたらまだ治っていなかったかもしれません。
- 精神科
- 心療内科
- 心理カウンセラー
といった専門の医師や診療期間に相談することで、「今」「この患者さんに」「どんな治療が適切なのか」を見極める時間がぐっと短縮できるのです。
行動療法、認知療法、お薬、他にも色々な改善への道筋があります。孤独に戦い続けるのではなく、「専門家に頼る」という最も早く、最も最短の戦いを選択することが患者さんの体も心も守ることに繋がります。