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脱毛症

円形脱毛症の治療方法には何がある?注射や薬以外の方法も

円形脱毛症の根本原因は自己免疫疾患であり、本来自分を守るはずの免疫が暴走し、誤作動をおこしてしまうことで自分を攻撃してしまうというもの。

この自己免疫疾患の治療方法はまだ確立はしていませんが、円形脱毛症に対し効果が認められた、あるいは有効な手段と考えられているものを「日本皮膚科学会」がまとめ、ガイドラインとして全国に発表しています。

基本的にはそのガイドラインに照らし合わせながら、患者の状態に合わせて有効な治療法が選択されます。ではその治療方法にはどのような選択肢があるのでしょうか?

▼円形脱毛症の原因についてはコチラを参考にしてください!

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日本皮膚科学会で推奨される積極的な治療方法とは

日本皮膚科学会では、円形脱毛症に対し有効な手段をガイドライン内で評価し、積極的に推奨しています。

しかし治療にはメリットの裏に必ずデメリットがついて回ります。個人差や体質などはもちろんのこと、根本原因である「自己免疫疾患」は実に多用な症状が現れるものなので、色々な治療法を試してみる場合もあります。

では具体的にどのような治療法があるのか、その治療法のメリットとデメリットをチェックしてみて下さい。

ステロイド局所注射

日本皮膚科学会が推奨する治療法の中でも評価の高い方法が「ステロイド局所注射」です。

ステロイドは免疫機能を抑制する働きがあり、全身性の自己免疫疾患に対し使用されることもある治療方法です。このステロイド剤を患部(脱毛している部分)に局所的に注射で投薬することで、免疫異常が起きている部位の炎症を鎮め、暴走している免疫を抑える効果があります。

円形脱毛症は暴走した自己免疫が毛根や毛細胞を攻撃してしまうことによって起こる症状なので、そのような誤作動を起こした免疫を鎮めることで症状が改善する可能性が高まります。

<メリット>

  • 幅広い成人層に対し有効
  • 単発型、進行期以外の複数型に高い有効性がある
  • 保険適用で出来る

<デメリット>

  • 副作用を考慮し、成人未満、小児には適用されない
  • 注射であるがゆえに注入時に強い痛みを感じる場合がある
  • 局所治療となるため、全頭型や進行期など患部が広い、多い場合には非効率となることがある

また、ステロイドで免疫を抑制することによって、副作用として吐き気や嘔吐、発疹、胃痛など別の症状が現れる人もいます。使用したい場合には医師とよく相談しましょう。

局所免疫療法

人工的に皮膚上にかぶれを起こし、毛根を攻撃している免疫機能の矛先を変えて抑制するという方法です。

免疫機能の攻撃対象を人為的に変えることにより、本来発毛するはずの毛根を守り、発毛・育毛を促進させる効果があるため、現在では世界的に脱毛の治療として活用されています。

<メリット>

  • 成人未満、小児でも使用出来る
  • 全頭型や汎発型などの患部が広い、多い場合に有効
  • 徐々に薬剤の濃度を上げていくため、体質に合わない場合すぐに中止が出来る

<デメリット>

  • 日本では未認可であるため、自費負担の治療となる
  • 人工的なかぶれを起こさせるため、全身接触性皮膚炎や強いかゆみを生じることがある
  • アトピー性皮膚炎の持病がある場合、一時的に悪化することがある

高い発毛効果があるとされ、日本皮膚科学会でもステロイド注射と同様に推奨している方法ではありますが、自費負担や副作用などのリスクは伴います。選択前に必ず医師とよく相談して下さい。

ステロイド薬や抗アレルギー薬の内服

飲むタイプのお薬として、ステロイド成分の服用や抗アレルギー薬の服用も効果があるとされています。

自己免疫疾患の場合「免疫を抑制する」のが第一優先となりますので、外側と内側両方から治療を行う場合もあります。

<メリット>

  • 進行期や急性症状などにも効果がある
  • アトピー性皮膚炎などアレルギー症状がある患者にも有効である
  • 他の治療と並行して行うことが出来る

<デメリット>

  • 副作用を考慮し、ステロイド服用は小児には行わない
  • 薬剤によっては血圧上昇や腹痛などの副作用があり、持病がある場合の投薬は慎重に行わなければならない
  • 薬剤が体質に合わない場合もあり、服用量などを慎重に調整する必要がある

どのような薬にも言えることではありますが、胃壁や腸壁にダメージを受けたり、デトックス機能のある腎臓に負担が生じるリスクはあります。

また、高血圧症など他の持病があり、すでに他のお薬を処方されている方は飲み合わせもあるため、必ず服用中の薬を医師に申告し処方を検討してもらいましょう。

塗り薬や湿布などの外用薬

患部に軟膏や湿布などの外用薬をつける治療法もあります。こちらも内服薬治療と同様、それ以外の治療と組み合わせて行うこともできます。

タイプは様々あり、部分的な患部(単発型、少ない多発型)には塗り薬タイプもありますし、頭全体に患部が広がっている場合には塗り薬に加え貼り薬(湿布)を処方される場合もあります。円形脱毛症の幅広い症状に対応出来る治療法とも言えます。

<メリット>

  • 単発型から全頭型まで色々な症状に対応出来る
  • 患者の負担(物理的、精神的)が少ない
  • 薬剤によっては小児から使用も出来る

<デメリット>

  • 難治性の症状に対しては効果が薄い場合がある
  • 発汗、かぶれ、かゆみなどの副作用が現れることがある
  • べたつきなど使用感に対しストレスを感じる場合もある

外用薬治療は最も一般的、かつ患者にとっても身近な治療法かもしれません。使用感などは慣れの部分も大きいものですが、我慢できない不快感が伴う場合は別の薬剤に変えてもらうなど柔軟な対応を取りやすいのもひとつのメリットと言えるでしょう。

ドライアイスを用いた冷却療法

マイナス196度という超低温のドライアイス(液体窒素)を患部にあて、免疫を抑制させて発毛を促す治療法です。

原理的には局所免疫療法と同じで、人工的に「軽いキズ」をつけることで免疫機能の攻撃の矛先を変えることで発毛を促進するというものです。

発毛効果としては「ステロイド注射」や「局所免疫療法」と比較するとやや劣るため、内服薬や外用薬との並行治療として取り入れる医療機関が多いようです。

<メリット>

  • 他の治療法とくらべて副作用が少ない
  • 小児、高齢者にも使用が出来る
  • 施術できる医師が多く、保健も適用される

<デメリット>

  • 液体窒素を塗布して人工的な火傷を負わせるため、軽い痛みが起こる
  • 発毛効果の実証はその他の治療法と比較するとやや低い
  • 長期間(1年以上)の継続治療ではあまり効果が上がらない

つまるところ、液体窒素で軽い凍傷をわざと起こしているわけですから、通常効果があれば1〜2ヶ月という短期間で治療効果が見られます。

しかし、1年やっても治療効果が見られない場合、自己免疫が攻撃対象を変更できていないということになります。

その場合は冷却療法は打ち切り、別の治療法を試みるケースが多いようです。

点滴静注ステロイドパルス療法

少し大掛かりな治療となりますが、3日ほど入院をして大量のステロイド剤を点滴によって体内に注入する方法です。

早期発見の患者さんや、急性の進行症状がある患者さんに対しては高い効果が見られます。入院となるため一時的に日常生活には障りが生じますが、進行を食い止めるためにやむを得ないという場合もあります。

<メリット>

  • 早期発見、かつ重症患者に対して有効である
  • 即効性が高く数日で症状の改善が見込める
  • 入院は保険適用であるため患者の経済的負担は高くない

<デメリット>

  • 大量のステロイド剤を投薬するため副作用が出る
  • 小児には行えない
  • 免疫力をほぼ抑制するため、感染症リスクが高くなる

このステロイドパルス療法については、急性の重症患者に対してのみ行うほうが理想的とされています。

発症から6ヶ月以上経過している患者さんの場合、同じ量のステロイドを点滴注入しても効果が見られたのはおよそ15〜16%。急性期なら60%以上の患者さんに効果が見られたことと比較すれば、1/4以下の治療効果となってしまうのです。

紫外線照射療法

近年、アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎などの皮膚疾患治療にも用いられることが増えてきた「紫外線照射療法」が円形脱毛症にも有効であると考えられています。

紫外線を照射することによって、免疫細胞を破壊・死滅させ、誤作動を起こしている免疫機能を抑制することが出来るというものです。

<メリット>

  • 痛みや副作用がほとんど起こらない
  • 患部が広い場合にも適応しやすい
  • アトピー性皮膚炎などの治療にも利用されるため、皮膚疾患がある場合にも応用しやすい

<デメリット>

  • 発毛している部位には使用出来ない
  • 日焼けのようなひりひり感、水ぶくれなどが起こることがある
  • 免疫細胞を破壊する治療のため、小児には推奨されない

また、紫外線療法は保険適用外の治療法であるため、費用はすべて自己負担となります。通常効果が現れるまでに半年〜1年近くが見込まれるため、照射頻度が高くなればその分経済的負担は増える可能性があります。

直接偏光近赤外線照射療法

近赤外線を患部に当てることで血行を促進させ、患部の炎症を抑えた上で発毛促進をするという治療法です。スーパーライザー療法とも呼ばれていて、日本皮膚科学会では内服薬や外用薬との並行治療として行っても良いとしています。

赤外線には抗炎症作用、鎮痛作用、腫れ緩和などの効果がある他にも、自律神経系統にも作用するため、免疫機能の誤作動を制御しやすいと考えられています。

<メリット>

  • 副作用がほとんど起こらない
  • 幅広い年齢層の患者に使用出来る
  • 血行促進により慢性疲労などその他のストレス症状も緩和しやすい

<デメリット>

  • 比較的軽症の患者向けであり、重症患者の効果実績は低い
  • 妊婦や糖尿病患者など利用が制限される人もいる

他の治療法と比較しても、デメリットと考えられる要素が極端に少ない、最も安全性の高い治療法と言えるかもしれません。もちろん熱感がある場合もありますが、専門の技師による照射なので火傷のような状態になることはほとんど無いようです。

積極的治療と同時に行えるケア方法とは

育毛剤やサプリメントなど、世の中では様々な円形脱毛症の「民間療法」も広がっています。もちろん全く効果がない、というわけではありませんが、円形脱毛症は疾患です。

専門の医療機関での治療を受けた上で、その他のセルフケアを「治療に支障をきたさない程度」に取り入れるのが最も効率的でしょう。

日本皮膚科学会も推奨する、薬剤や器具を使用しない上で自分で並行して行えるセルフケア方法をご紹介します。

ウィッグ(かつら)の着用

最も現実的で、かつデメリットの少ない方法です。円形脱毛症の治療は、即効性があるものだとしても新陳代謝のサイクルなどによって「最短で1〜2週間以上」はかかります。

その間、ずっと頭を見せずに生活出来る人のほうが少ないと思いますし、患部を気にしすぎるあまり生活に支障をきたせば、それはそれで精神的苦痛、ストレスと言えます。

今はファッションウィッグなどが非常に豊富に販売されていますし、医療機関と提携しているウィッグメーカーも多数あります。

海外では医療器具のひとつとして取り入れられているウィッグ。偏見を恐れず、メガネや松葉杖と同じものだと認識を改めて生活に取り入れるのも、治療効果を上げる一つの方法なのではないでしょうか。

肩コリや首コリの緩和

頭部の血行だけを良くしても、首や肩が岩のようになってしまっていれば、心臓からの血流がそこで阻害され、結果的に頭皮まで温かい血が流れにくい状態を作ります。

治療中は刺激の強いヘッドマッサージなどは避けたほうが無難ですが、首や肩のコリは積極的にほぐすようにしてみて下さい。コリを緩和することで自律神経のバランスも整いやすくなり、自己免疫を調整する機能が回復しやすくなりますよ。

また、リラックス効果によって精神的なストレスが軽減されるため、自己免疫機能の誤作動を悪化させにくくするなど良い効果も生まれます。

日頃頑張りすぎている自分の免疫力へのご褒美と考え、ケアする時間を作るのも良いかもしれません。

食事内容や生活習慣の見直し

根本的なことではありますが、食事の内容や生活のバランスなどを見直すのも治療効果を高める方法のひとつです。

例えば、ステロイド剤を服用する治療を開始しているのに刺激性の高い激辛料理を毎食食べるような食生活を送っていれば、当然胃粘膜はダメージを受けます。胃腸が弱ることでそこで作られている免疫機能は誤作動を起こしやすくなり、結果的に薬の効果を弱めてしまうことがあります。

また、飲酒、喫煙などデトックス機能を衰えさせる生活習慣も自己免疫機能の誤作動に繋がりますし、睡眠不足は自律神経の衰えを起こし、自己免疫の調節が出来にくくなる場合も考えられます。

「治療」を行っている間は極力不摂生をしない。この意識をもつだけでも、円形脱毛症の治療効果は格段に変わるのです。

漢方薬や鍼灸治療は学会推奨はされていない

否定こそされておりませんが、現状「漢方薬」や「鍼灸治療」は円形脱毛症の治療効果においては検証が不十分であるとされ、推奨はされていません。

もちろん歴史の古い東洋医学の中には、脱毛症に効果のある経穴(ツボ)や経路(血の流れ)、薬膳や漢方などの知識もありますが、現状の日本ではまだ「民間療法」の域を出ていないのです。

西洋医学では効果が見られなかった、という人の中には改善例を上げている患者さんも一定数いらっしゃいますが、自己判断はせず医師に相談するようにした方がベターです。

また、ステロイド薬など突然休止することによって副作用が重篤化する薬剤を処方されている人は特に切りかえのタイミングに注意するようにして下さい。

自分の生活に制限を設けないための選択を

一言で「円形脱毛症」といっても、実に様々な治療法があります。

一番大切なのは「自分が納得した治療法」を選択すること。

これはどのような疾患であっても言えるかもしれませんが、特に自己免疫疾患の場合「原因も治療法も確立していない」病気なので、「絶対に効果がある薬」が存在するわけではないのです。

言葉を選ばずに申し上げれば、「一種の賭け」とも言えるのが自己免疫疾患の治療です。効かなければ別の治療法を選択しなくてはなりませんし、それがどの程度の期間続くかも個人差があります。

医師から推奨される治療法のメリットとデメリット両方の知識をきちんと認識し、自分の生活に影を落とさない一番良い方法を探しましょう。それが「QOL(生活の質)」を守る治療、ということになるのです。

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