脱毛症
円形脱毛症の原因は自己免疫?100万人が悩む疾患の原因とは
円形脱毛症はある日突然、特に大きな前触れも無く起こると言われています。物理的な原因がないという人も多く、実際にこのような症状が起きた時ほとんどの人は「精神的なものかな」「ストレスかな」と考えるのではないでしょうか。
しかし、実は「円形脱毛症の原因」は「ストレス」ではありません。
ストレスはあくまでも円形脱毛症の根本的要因の中に含まれる誘発原因であって、根本原因はまた別にあるのです。
まずは円形脱毛症の根本的な考え方と原因について理解を進めましょう。
円形脱毛症の原因は「ストレス」なの?
「10円ハゲが出来ちゃった、どうしてだろう?」
もしご家族や友人にこんなことを相談されたら、あなたはなんと答えますか?
おそらく筆者は、あまり深くは考えず「ストレス多いんじゃない?」と言うだけかもしれません。これは間違ってこそいませんが、実は正しくもないのです。
ストレスは誘因であって原因ではない
「脱毛=ストレス」という考え方は非常に多くの人に認知されています。
精神的な負担やプレッシャー、継続的な抑圧などが続くと、確かに体からのSOSサインとして脱毛症状が見られますし、脱毛症状に悩む人の多くが「ストレス」を感じているというのも事実です。
しかし、このストレスは精神的側面の原因だけが理由で起こるものではありません。
- 病気や怪我などの身体的ストレス
- かゆみ、痛みなどによる感覚的ストレス
- プレッシャーや恐怖心、羞恥心など精神的ストレス
このように、ストレスは気持ちだけではなく実際の体からも起こるものです。毎日頭が痛い、という人はこの痛みと症状によってストレスを受けますし、寒さに弱い、という人は冬の気温によって皮膚感覚のストレスを感じるのです。
つまり日常の中で「ストレスを脳が感じずに済む場合」はほとんどありません。しかし、大半の人はそのような状況下でも脱毛症状が起きるわけではありませんよね。
すなわち円形脱毛症の原因は「ストレス」ではなく、それによって起こることもある「別の原因」が存在するのです。
円形脱毛症にもタイプがある
円形脱毛症というと10円ハゲや500円ハゲ、といった状態を想像するかもしれませんが、実は色々なタイプがあります。原因は同一であったり別であったりと様々ですが、治療の難易度が変化します。
- 単発型…最も多い、1〜2個の円形脱毛斑が出る症状
- 多発型…2個以上の円形脱毛斑が出る症状
- 全頭型…円形脱毛斑が全体に広がり、8割〜10割の毛髪が抜ける症状
- 蛇行型…円形脱毛斑が後頭部から側頭部にかけて蛇のように連なって現れる症状
- 汎発型…全頭型や蛇行型が悪化した場合の症状で、眉やまつ毛まで抜ける症状
一般的に単発型は半年〜1年で80%以上の人が完治出来ると言われていますが、脱毛の範囲が広がれば広がるほど治療にかかる時間や難易度は上がると考えられています。
女性にも子供にも多発する理由
円形脱毛症は男性型脱毛症よりも多い確立で女性、子供にも発症します。
もちろん子供であってもストレスは存在しますので、それが誘因である可能性は否定できませんが、女性や子供に多い理由としては「アレルギー反応」が考えられるとされています。
そのため円形脱毛症は育毛剤やヘアケアだけでは解決しづらく、できるだけ早期の専門的な治療が必要とされているのです。
円形脱毛症の基本原因は「自己免疫疾患」
ここまでお読み頂いた方はもうピン!ときているかもしれません。そう、円形脱毛症の根本的原因は「自己免疫」に関係するのです。
この自己免疫に誤作動が起こることを「自己免疫疾患」といい、円形脱毛症も自己免疫疾患の症状のひとつなのです。
自己免疫疾患は様々な症状が起こる疾病
自己免疫疾患は、自分が元々持っている免疫機能が何らかの原因によって誤作動を起こし、本来攻撃しなくても良い自分の健康的な組織を攻撃し、排除しようとしてしまう疾患です。
リンパ球が炎症を起こし、全身の臓器や骨を攻撃してしまったり、皮膚細胞を攻撃してしまうなど多種多様な症状があります。
免疫が誤作動を起こしたとしても、大抵の場合はあまり自覚症状はありません。そのため、ある日急に脱毛症状が起きたように感じられ、「ストレスかな」と自己判断してしまう人が多いのです。
継続したストレスが自己免疫疾患を誘発する可能性
自己免疫疾患は何故起こるのか、実は未だにはっきりとはわかっておりません。
- 遺伝性
- ウイルス感染や薬の副作用
- 年齢による影響
- 環境などによる体質の変化
これ以外にも、実は「長期的に継続した何らかのストレス」によって起こる可能性も考えられています。
先にお話した通り、ストレスは精神面、肉体面両方から発生します。そのため、ストレスそのものを特定するのは困難ですが、本人の体、あるいは脳にとって良くないストレス(負荷)がかかりすぎており、かつそれが長期的に続いた場合、自己免疫に狂いが生じやすい可能性が高いのです。
これには自律神経も大きく関係しています。
この自律神経はもちろん免疫機能にも関わっているため、この「自律神経の乱れ」が全く解決に向かわず、長期的に続いた場合に「自律神経の乱れ→免疫機能の誤作動」につながっているのではないかと考える医師も大変多くいます。
アトピー性皮膚炎など皮膚疾患
原因不明の蕁麻疹や発疹はもちろん、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性皮膚炎も免疫機能の関与が考えられています。
つまり新陳代謝などによって生み出される老廃物、外気に含まれるウイルスや雑菌などを「排除」せず守っておこうとしてしまい、結果的にそれが皮膚の炎症を起こすというものです。
頭部は他の体の部位と比較しても、雑菌やウイルスが付着しやすい部分です。
もしも頭皮周囲において自己免疫異常が起こると、これらの悪い菌が排除されず頭皮上にある栄養分や髪の赤ちゃんとなる細胞を消化してしまうため、髪が生えてきづらくなり部分的、あるいは全体的な円形脱毛症の症状が起こるのです。
インフルエンザなどの感染症
インフルエンザウイルスなどの病原体に感染することも、自己免疫疾患の引き金のひとつと考えられています。
インフルエンザや風邪などが長引き、やっと治りかけてきた時にごそっと髪の毛が抜ける、という体験をした人は大変多くいらっしゃると思います。
病気中は代謝力も落ちるため、回復傾向になった途端代謝が活発になり、それまで停滞していた老廃物を一気に押し出そうとする作用が働くことも、ひとつの原因なのかもしれませんね。
何らかのアレルギー反応が起因することも
アレルギーにはアトピー性皮膚炎を含めた「皮膚アレルギー」、食物などから起こる「食物アレルギー」があります。
皮膚炎以外の症状として、咳込み、くしゃみ、感覚異常、発熱などがありますが、こうした症状のひとつに「脱毛」も含まれます。
アレルゲンは本当に多種多様であり、個人差も著しいために特定するには専門の医療機関で詳しく検査を受ける必要があります。
そのためか積極的に「自分に何かのアレルギーがあるか」を知ろうとする人はまだ少なく、重大な症状が起こってから始めて自分にアレルギーがあったと知る人も沢山います。
病気や怪我の後遺症
入院が必要なレベルでの大きな病気や怪我を経験した場合、後々の後遺症として自己免疫疾患を患う人も多くいます。
この因果関係もまだ明確ではありませんが、大きな病気や怪我をすると、人の体は免疫力を働かせ自然治癒能力を向上させるという本能的な反応が起こります。
自己免疫疾患は「全身性の症状」か「臓器など一部の特異的疾患」かに分けられ、円形脱毛症は後者に振り分けられます。ある意味では「後遺症」的なものとして、こうした自己免疫疾患が現れることもあるのです。
女性ホルモン低下も免疫力に影響を及ぼす
実は自己免疫疾患は女性の発症率が男性のおよそ2倍〜10倍とされています。今考えられているのは女性ホルモンの分泌量と自己免疫疾患の関係性です。
女性ホルモンは体内の細胞を活発にさせる他、免疫力を高めたり痛みや老廃物を除去するためのデトックス作用も持っているとされています。
女性ホルモンなど内分泌系統の乱れは自律神経にも直接作用しますから、「自律神経の乱れ」と「ホルモンバランスの乱れ」のダブルパンチによって円形脱毛症を発症するという女性も少なくはありません。
早期の治療が早期完治のカギに!皮膚科を受診しよう
脱毛症は実は根が深い症状です。自己免疫というのは全身に影響を及ぼすものですし、放置しても治らないという場合はもちろん、ひどくなってしまう場合も考えられます。
早い発見、早い治療であれば円形脱毛症の治癒率は80%以上という統計も出ています。精神的にも身体的にも早く楽になれる方法を迷わず選ぶ、というのが健やかな美髪を育てるカギでもあるのです。